健康長寿の鍵 ~乳酸菌発酵液~
バイオジェニックス健康法
東京大學名誉教授 光岡知足

健康長寿の鍵を握る腸内細菌

腸内には善玉菌と悪玉菌がいっぱいいる

 私たちの腸内には100種類、100兆個もの細菌が棲みついています。これらの細菌は種類ごとに一定の場所に棲んでいることから、その様子をお花畑にたとえて「腸内フローラ」と呼んでいます。これらの細菌の中には、その働きの面から見れば、ビフィズス菌のような善玉菌もあれば、大腸菌やウェルシュ菌などの腐敗菌に代表される悪玉菌もあり、また、普段はたいして悪玉菌とは言えないのに、体調が崩れた時、悪玉菌として働く日和見菌があります。そしてこれらの細菌が一定のバランスを保っています。

腸内フローフのバランスは年齢とともに悪くなる

 赤ちゃんが生後初めて排泄する便は通常無菌ですが、5~7日目になると乳児の大腸内にはビフィズス菌が最も優勢となり、全菌叢の95~100%を占めるようになります。したがって、赤ちゃんの腸内は非常にきれいなのです。
 乳児が離乳食を摂るようになると、腸内細菌のバランスは成人のパターンに似てきます。幼児から成人の腸内細菌のバランスはバクテロイデス、ユウバクテリウム、嫌気性連鎖球菌などの嫌気性菌が最も優勢となり、ビフィズス菌は腸内細菌全体の10~20%程度に減少します。一方、大腸菌や腸球菌は総菌数の100分の1以下にすぎません。このように、幼児以後の腸内環境は乳児に比べるとはるかに悪いのです。
 老年期に入ると、ビフィズス菌はさらに減少し、全く検出さいない個体も見られるようになります。
Fig.01
図1
 これに対し、悪玉菌は検出率・菌数とも非常に増加してきます。この現象は宿主の生理機能の老化が腸内細菌のバランスに影響を及ぼした結果と考えられますが、それがさらに老化を促進することにもなるのです(図1)。



腸内細菌と健康のかかわりあい

Fig.02
図2
毎日摂取される食べ物の成分や腸内に分泌・排泄される生体成分は、腸内細菌によってさまざまな物質に変換されるため、生体の栄養・老化・発ガン・免疫などにさまざまな影響を及ぼすことになります(図2) 。
 便秘をすると、腸内で悪玉菌が増え、腐敗産物、細菌毒素、発ガン物質、二次胆汁酸などの有害物質が腸管自体に直接障害を与え、一部は吸収されて長い間に、肝・膵・心・生殖器など各種臓器に障害を与え、発ガン・動脈硬化・高血圧・肝臓障害・自己免疫病・免疫能の低下など、いわば生活習慣病の原因となる可能性が強いのです。特に、欧米型の食事に多く含まれるタンパク質や脂肪そのものには発ガン性はないのですが、腸内に入り、その一部が消化されずに大腸に達すると、大腸内の有害菌によって発ガン物質や老化物質に変換されてしまいます。欧米型の食事ばかりお腹いっぱいに食べて、しかも便秘が続くと腸内に悪玉菌が増殖して、やがて発ガン・老化・肌荒れなどとなってあらわれます。
 また、腸内常在菌のなかには潜在的に病原性のあるものもあって、宿主の老化や抗生物質・免疫抑制剤・制ガン剤・副腎皮質ホルモンなどの投与、ストレス、放射線治療などによって宿主の抵抗力が低下したとき、このような細菌が腸管から血流や臓器に侵入して病原性を発揮し、敗血症や各臓器の膿瘍の原因になります。この病気はときに生命にかかわることがあり、日和見感染症と呼ばれています。


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